私のはてな

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あの子の匂い

冬にあの子がよく、カサついた肌にボディクリームを塗っていた。その匂いがずっと嫌いだった。いや、その匂いに包まれたあの子が嫌いだった。

クラスの中でもずば抜けて可愛く、そして大人しくて、でもどこか抜けてて、それがまた可愛くて。みんなで鬼ごっこをするときも、絶対に鬼になることはないような、何か間違ったことをしても、「いいよいいよ、君だから許すよ」と言ってもらえる、みんなから守られた女の子だった。ふんわりしていて、性格も良くて、私の理想だった。私に持っていないものを全部持っていた。私はずっと、この子になりたかった。嫉妬だった。何もかもが羨ましかった。

私がぽそりとつぶやいた、「私はあなたになりたい」という言葉に、「私はみやになりたいよ」って返された。何でこんなに可愛い子が、私になりたいと思うのか全然わからなくて、嫌味のように受け取ってしまった。絶対嫌味を言うような子ではないのに。

それから私は、あの子を何となく避けるようになって、話さなくなった。全部が羨ましくて、私の何もかもが否定されるようで、辛かったから、もう関わりたくなかった。いきなり話さなくなって、避けるようになって、ひどいことをしてるというのはわかっていたんだけど、どうしてももう無理だった。

私の方が一方的に嫌いになって、一方的に離れて、崩してしまった友情を、いやでも思い出してしまう、あのボディクリームの匂いが何となく恋しくなって買ったんだ。

また仲良くしたいけれど、私は可愛くないから、きっとまた劣等感に苛まれて同じことを繰り返すんだろう。だから私は、このボディクリームの匂いに包まれることで、あの子にしたことを一生忘れずに過ごしていきたいと思う。